大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和48年(わ)712号 判決 1973年10月24日

本籍

福岡県北九州市小倉区大字辻三四九四番地

住居

大阪府門真市新橋町八二七番地の二

医師

生井克美

昭和四年八月二九日生

本籍

福岡県北九州市小倉区大字辻三四九四番地

住居

大阪府門真市新橋町八二七番地の二

無職

生井水速

明治三一年一〇月二七日生

右両名に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官高橋哲夫出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人生井克美を罰金一、五〇〇万円に

被告人生井水速を懲役一年に

各処する。

但し、被告人生井水速に対しこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

被告人生井克美において右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人生井克美は、大阪府門真市新橋町八二一番地の一所在の生井世光病院の開設者であつて同病院を経営していたもの、被告人生井水速は、右生井世光病院の経理事務責任者として経理全般を掌理していたものであるが、被告人生井水速は被告人生井克美の右業務に関し、同被告人の所得税を免れようと企て

第一、被告人生井克美の昭和四四年分の所得金額が八、一一一万七〇四円で、これに対する所得税額が四、九三七万一、四〇〇円であるのに拘らず、収入金の一部を除外する等の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四五年三月一六日門真市門真税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が三、六五一万九、〇〇三円で、これに対する所得税額が一、七八〇万八、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税三、一五六万三、一〇〇円を免れ

第二、被告人生井克美の昭和四五年分の所得金額が九、八四二万七三〇円で、これに対する所得税額が六、〇二九万三、八〇〇円であるのに拘らず、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年三月一二日前記門真税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が四、一〇七万二七九円で、これに対する所得税額が一、九九一万九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税四、〇三七万三、九〇〇円を免れ

第三、被告人生井克美の昭和四六年分の所得金額が一億一、九五三万九、九七七円で、これに対する所得税額が七、四六五万六、二〇〇円であるのに拘らず、前同様の行為により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年三月一三日前記門真税務署において、同税務署長に対し、同年分の所得金額が四、八一九万五、八四一円で、これに対する所得税額が二、三四五万一、一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により所得税五、一二〇万五、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人生井克美、同生井水速の当公判廷における各供述

一、被告人生井克美、同生井水速の検察官に対する各供述調書

一、被告人生井克美の収税官吏に対する質問てん末書八通

一、被告人生井水速の収税官吏に対する質問てん末書一三通

一、堀口豊昭、生井明子の検察官に対する各供述調書

一、堀口豊昭の収税官吏に対する質問てん末書五通

一、島本晃代の収税官吏に対する昭和四七年七月二八日付質問てん末書

一、篠原順子、吉田純子の収税官吏に対する各質問てん末書

一、生井明子の収税官吏に対する昭和四七年六月二〇日付、同年八月三一日付、同年一二月二七日付質問てん末書

一、島本晃代作成の昭和四七年一一月二六日付確認書

一、堀口豊昭作成の昭和四七年八月三〇日付、同年九月一日付、同月六日付確認書

一、吉田純子、生井明子作成の各確認書

一、収税官吏松村実、同芦田修、同稲田登(二通)、同土屋義昭作成の各査察官調査書

判示第一、第三の事実につき

一、島本晃代の収税官吏に対する昭和四七年一一月二七日付、昭和四八年一月一二日付質問てん末書

一、島本晃代作成の昭和四七年一一月一〇日付確認書

判示第二、第三の事実につき

一、生井明子の収税官吏に対する昭和四七年一二月七日付質問てん末書

一、堀口豊昭作成の昭和四七年一二月八日付確認書

判示第一の事実につき

一、大蔵事務官荻野誠造作成の証明書(但し、被告人生井克美が昭和四五年三月一六日税務署長に申告した所得税申告書の写を添付したもので、昭和四四年分所得税確定申告書謄本と表題が付されているもの)

判示第二の事実につき

一、大蔵事務官荻野誠造作成の証明書(但し、被告人生井克美が昭和四六年三月一二日税務署長に申告した所得税申告書の写を添付したもので、昭和四五年分所得税確定申告書謄本と表題が付されているもの)

判示第三の事実につき

一、大蔵事務官荻野誠造の証明書(但し、被告人生井克美が昭和四七年三月一三日税務署長に申告した所得税申告書の写を添付したもので、昭和四六年分所得税確定申告書謄本と表題が付されているもの)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為はいずれも所得税法二三八条一項(なお被告人生井克美に対しては更に同法二四四条一項)に該当するところ、被告人生井克美につき、情状により同法二三八条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により所定罰金額を合算した金額の範囲内で同被告人を罰金一、五〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金一〇万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、被告人生井水速につき、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役一年に処し、諸般の情状に鑑み同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 橋本達彦)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例